1994年に創業。中堅・中小製造業向けの生産管理パッケージの開発・販売、及び導入をメインの事業として行ってきた、株式会社エクス(以下略して、エクス)。同社の主力製品は、「Factory-ONE 電脳工場」(以下、略して電脳工場)と呼ばれる生産管理システムだ。 

創業当時、生産管理システムを導入できるのは大手企業だけだった。しかし、「中堅・中小企業にも生産管理システムを使ってもらいたい」という想いで、エクスを創業し、以来30年間に渡って、中堅・中小製造業向けの生産管理パッケージの開発・販売、及び導入を行っている。 

今回は、製品開発部門の責任者である鈴木氏と、製品開発部門 製品企画担当者である畠山氏に、エクスの現状やNashTechとの協業、今後目指す未来について伺った。 

エクスが製造業に提供している価値とは 

主力製品である電脳工場に加え、昨今ではクラウドアプリケーションが主流になってきている背景を受けて、クラウド型 中小企業共通EDI対応 サービス「EDiFAS」や、DX実現に向けたソリューションライブラリである「EXfeel」の提供も行っている。 

「EDIFAS」による、リアルタイム性の向上 

クラウド型中小企業共通EDI対応「EDIFAS」。 サービスを低コスト、かつ短期間でサプライチェーンを構築できるクラウド型EDI(調達・購買)サービスだ。エクスの提供している生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場MF」を導入している企業に限らず、他社の基幹システムを導入されている企業やシステム未導入の企業でも、CSVやAPI(オプション)連携を利用し、見積・受発注・入出荷など、EDIの機能活用をすることができる。 

https://www.xeex.co.jp/products_services/extelligence/edifas 

「これまで現場の人と勘と度胸を頼りにして行ってきたような事務作業をIT化し、効率化することで、コスト削減の支援をしてきました。しかし、どうしても私たちの支援はバックエンドの支援に留まっていました。」と語る鈴木氏将来的には、クラウドネイティブな生産管理システムとして、様々なデジタルテクノロジーを活用することで製造現場を直接サポートできる仕組みとし、リアルタイム性と精度の高い情報を得ることで現場だけでなくマネージャーや経営層での意思決定を支援していくことを目指している。また、従来の生産管理システムという概念だけでなく、プラットフォーム化することで、単一企業の最適化だけでなく、サプライチェーン全体の最適化を目指している。 

NashTechとの協業による新たな挑戦、クラウド開発。 

エクスの電脳工場では、製造業のデータを沢山保有しているが、電脳工場内では実現範囲が難しいものも存在した。そこで、よりデータを活用し、新しいソリューションを提供するために「電脳工場拡張ソリューション」という新たなサービスを設け。そのシリーズの1つである「EXQR現品照合」の開発でNashTechと協業することに。 

「EXQR現品照合」とは、QRコードiPhoneの誤品チェックアプリを使用して商品の誤出荷を防止する機能だ。今回のNashTechとの協業では、2021年12月にリリースしたオフライン版に機能を追加し、新しいアプリとして「EXQR現品照合 クラウド版」としてリリースした。 

NashTechに期待していたことや決め手とは? 

「クラウド開発に関する新しい技術でした。現品照合のプロジェクトを行う前に、実は別のアプリケーションについてNashTechにお声掛けをしていました。情報交換を行う中で、今後私たちが必要としている技術を持っていると判断しました。」 

以前から、定期的な情報交換やその他プロジェクトを通して話し合いを重ねてきた。その中で、今回必要になったクラウドやモバイルアプリ関連技術に長けていることと合致したため、NashTechを選択したと言う。 

モバイルアプリの構築実力はもちろんの事、クラウドアプリケーションを構築していく上AWSで必要になる情報量の多さやスキルの高さなどが決め手の1つです。 

アジャイル開発の知見と品質の良さ 

「これまで、ウォーターフォール開発が主流だった弊社にとって、アジャイル開発の知見や経験は少なく、正解もわからない状態でした。しかし、NashTechとの協業は、アジャイル開発に関する情報や、高度な進め方を知る良い機会になりました。」と畠山氏 

アジャイル開発の知見を得ると同時に、社内で進行している他のプロジェクトに知識を共有し、社内全体でのスキルアップに繋がったという。 

さらに、短期間での納品物の品質の良さについても言及してくれた。「これまで開発してきた中でも、品質を担保する力やコミュニケーション能力の高さは非常に感じました。言語の壁を超えたコミュニケーションの中で、質問に対する回答のクオリティの高さやレスポンスの速さ、バグの少なさや検証品質の良さに驚きました。 

テストケースのパターンのしっかりとした作り込みで、クオリティの担保があったことが安心感に繋がったという。テスト専用のメンバーを配置し、1スプリントの中でも繰り返し行うテストは、NashTechの強みの1つと言えるだろう。 

今回の協業で「技術力の確認や今後の協業の展開に広がりが見えた」と語る畠山氏と鈴木氏は、エクスとしての今後の展望についても語ってくれた。 

導入してからが始まり。製造業者に対し持続的な業務高度化の支援を。 

今回、iPhoneで使える現品照合のアプリを開発したが、モバイル端末を使って製造業の現場を支援することで、お客様から今後さまざまな未来が見えるという評価をもらっているという。 

「これまでは、現場の人が集めた情報を翌日に事務方の担当者が一括入力をしていました。そのため、情報のリアルタイム性がない状態でした。一方で、モバイル端末を使用することで、現場の人が入力した情報を鮮度が高いまま分析できるようになります。これにより、棚卸しやピッキングなどの支援もエクスで行っていけると思っています。 

強みである顧客に寄り添ったきめ細やかな対応 

エクスがターゲットとしている中堅・中小企業は、製造業の中でも9割を占める。中小でもコストパフォーマンスを良く業務に取り組んでもらいたいが、システムに抵抗感がある人も多く、馴染んでもらうには苦労するという。そのような中で、顧客に合わせてカスタマイズして販売しているのもエクスの大きな強みだ。 

パッケージとして販売はしているが、販売や導入を行う中でエクスだけでなくさまざまなサポートパートナーが存在する。サポートパートナーにソースコードの提供だけではなく、ライセンスを購入した顧客に対してもソースコードの開示を行っている。 

導入してからがはじまりのサービスを目指して 

「今後は、システムの導入がゴールではなく、できる事がどんどん増えて、導入してからが始まりになるサービスを目指していきたいです。」と語るお二人。今回NashTechと協業した現品照合はそのうちの1つ。まさに顧客の業務改善のはじまり 

他にも、問題の品番をあぶりだす「在庫診断」や、在庫数値をいじることでどのようにすれば在庫の最適化ができるかをシミュレーションできる「在庫シミュレータなども進めているとのこと。 

日本の底力は製造にあると言われている。中でも中堅・中小製造業は数的に圧倒的に多い。これらの企業の地道な研究・開発・生産が日本の産業を支えていると言っても過言ではありません。このような企業を支えるエクスも重要な役割を果たしている。より多くの企業により明るい未来を与えるためにも開発からサポートできる事がまだまだあると考える