デジタルへの抵抗感の克服

一般的に人々は、すぐ得られる報酬がない限り、変化を好みません。ジムに通うことは良いアイディアだと思うでしょう、そして実際にそうなのでしょうが、一週間、二週間経った後に全然体重は減らず、引き締まらないとなると…完全に時間とお金の無駄だったと感じるかもしれません。

デジタル化することが「良い」アイディアなのかさえ分からない場合を除き、同じことがデジタルイノベーションにもいえます。デジタル変革は、仕事のやり方が変わったり、仕事自体が消えたりするという痛みを伴うだけでなく、成功の保証もありません。2017年 Harvey Nash/KPMG CIO 調査 (この分野における世界最大の調査)では 「変化への抵抗」がデジタルイノベーションの最大の障壁であったのも不思議ではありません。

この記事の中では、なぜ人々はデジタルイノベーションに抵抗し、それについて対策できることは何か、とあります。しかし、デジタルのことは脇に置いておくとして、人々は変化へ抵抗するとしても、なぜイノベーションにこんなにも大騒ぎするのでしょうか。イノベーションは進歩には必要なステップで、進歩することは良いことですよね?新しいアイディアが生まれたら試してみるのは自然なことではありませんか?

しかし、どうも違うようなのです。19世紀に遡ると、哲学者で心理学者のウィリアム・ジェームズはこのように上手くまとめています「人々は新しい見方に出会った時、『それは本物ではない』と言います。後にその真相が明らかになると、『それは重要なことではない』と言い、そしてその重要性が無視できなくなると『ともかく、それは新しいことではない』と言うのです」。

輝かしい新しいアイディアには、人々は直感的に疑問を持つように見えます。実際にそれを実行しようとするのは難しく、軍隊の格言に「いかなる戦術も眼前の敵には無力だ」というものもあります。(マイク・タイソンはまた『どんな人も、顔面にパンチを受けるまでは戦術を持っている』と彼なりの言い方で言っています)

上記の格言はスティーヴン・プール「再考:新しいアイディアについての驚くべき歴史」からの引用で、この本はイノベーションがどうして「顔面にパンチを受ける」ように感じられるのかを歴史から紐解いています(変化を押し付けられた人だけでなく、イノベーターも同じ気持ちなのです!)。実際、よく使われる「心を掴んで勝つ」というフレーズは、元はというとスティーヴンの本の中の、1950年代のマラヤの対ゲリラ作戦を率いたイギリスの司令官、サー・ジェラルド・テンプラーの回想記でした。彼はこのように言いました「困難の25%だけが戦場にあり、75%はマラヤの人々のハートとマインドを掴むことだ」

デジタルの話に戻りますが、なぜ人々はデジタルに抵抗するのでしょうか?この質問に答えるために、SaturnF1の創立者であるアラン・ワハにインタビューを行いました。SaturnF1は、デジタルGo-To-Market戦略で特定の業務を行うグローバル企業グループからのスピンオフ企業です(SaturnF1がスピンオフ企業であるという事実は、デジタルイノベーションへの抵抗に打ち勝つ手がかりとなりますが、その話はまた後に)。なぜ人々がデジタルに抵抗するかに対して、アランは「キャリアのために人々は『旧態依然とした業務』をするのです」と答えました。つまり、仕事とは常に成功が基準なのです。失敗に対する報酬はないのです!

革新的なデジタル環境の中で、アランはこのように言います「継続的なリ・インベンションは必要です。テクノロジーの進歩は非常に速いからです。また、このあまりに速いスピードのために、その方向性は誰にも分からず、それを習得する機会もないからです」。そして、彼は話を具体的にするために、部屋の後ろへ40歩下がることを想像してください、と言いました。「もし指数関数的な速度で前進するとしたら、どこまでいけると思いますか?太陽ですよ」。

技術革新の速度は、人々のやる気をくじくのと同様、企業さえも怯ませてしまいます。レガシー企業は長年、機能を構築し提供してきました。「破壊」の方法を取ることを勧めても、笑うだけでしょう。もしスタートアップ事業を一から始めたのなら、失敗は怖いものではありません。成功を祈りつつ、失敗してしまっても改良を重ねたり、新しいことを試したり、さっと立ち去るでしょう。経営者は良くないアイディアを早く消し、経験を積んだとして喜びます。早く失敗し、そこから早く学ぶことは良いこととされているのです。しかし既に成長した大企業の場合では、失敗はとても馬鹿げているように思われます。

それなら、デジタル率先力を考えているレガシー企業は、収益性より学習を優先すべきでしょうか?アランの見解では「個人ベースで考えると、そうではないでしょう。しかし、経営陣はポートフォリオの手段を取ります。どちらの方法を使うかを決めるには、ベンチャーキャピタリストの思考が必要です。ベンチャーキャピタリストは、ポートフォリオ全体の内部収益率を観察して、事業がどこのステージ(例えばシードステージ、スタートアップ、ブリッジ など)にあるかに応じて投資をします。スプレッドベッティングにより利益も損益もあるでしょうが、おそらく利益が出るでしょう。

デジタルイノベーションを成功させるために、アラン氏は3つの考慮すべき事項があると言います。

チームは素晴らしいですか?

グループがデジタル業務を実行する方法を考える際、一般的な手段は、エージェンシーに出向いてプロジェクトをアウトソーシングすることです。実績があり適切なスキルを持ったチームにより業務が進む一方、これは彼らのためになっていない、とアランは言います。グループはデジタル文化を構築することを望んでいるのに、プロジェクトをアウトソースしたのでは、チームビルドアップも知識の習得もアウトソースすることになってしまいます。デジタルの成熟度を上げ、デジタル思考を取り入れるという要求には答えていません。つまり、重要なことは「ポイントソリューション」と呼ばれるものを構築することではなく、社内の環境を作り出し、外部に頼らず変化し続けることなのです。

ニーズを満たすデジタルビジネスを入手することは理にかなっているのでしょうか。「こういったビジネスは可能ですか」と、私はアランに聞いてみました。彼は「社内へのノウハウの導入ですか?もしそれが素晴らしいものなら販売することはないでしょう」と言います。だから答えは多分「ノー 」です。しかし適切なビジネスが手に入ったとしても、自動的にデジタル文化を導入することには繋がらないのです。人々や企業文化を扱うシステムを構築するには、さらなる努力が必要です。

大きな問題に取り組んでいるところですか?

アランは「まずIT、ではなく、解決すべきビジネス上の問題を考えてください」と言います。これは彼の場合、オムニチャネルマーケティングを構築することを意味していました。販売員とデータを完全に結びつけ、販売業者やエンドユーザーに直販経路を提供します。企業グループにとってソリューションに技術とアジャイル手法が入っていることは難題です。しかし出発点は「レガシーチームによる成功が期待できない業務をこの12ヶ月ですること」でした。

誰かが問題を解決しようとしましたか?また、部分的にでもソリューションはありましたか?

もし答えがイエスなら、解決するだけの価値がある問題を抱えていることはチャンスであり、失敗のリスクは情報を集めることによって多少軽減されます。

余談ですが、既存のビジネスプロセスをデジタル化するよりも、新しいビジネスモデルを取り入れる方が、デジタルによる問題解決の価値があります。1990年代から少なくとも20年、重要視していたものは「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」で、効率化と成長でした。現在ではそれは基本ビジネスモデルの「破壊」そのもので、成功例としてはEasyJet、Uber、Airbnb、アマゾン、と挙げればきりがありません。したがって、スタートアップは、従来と根本的に違う方法でビジネスを行うリスクがあるのが明らかな一方で、地位が確立された先駆者(場合によっては市場トップさえも)に追いつくために急激な成長を推し進めます。スタートアップの「破壊」が意味するものは、現在レガシー企業にとって確固たる基盤が存在するという事実なのです。適応できない恐竜や、簡単に転回ができないオイルタンカーのようなビジネスはもう要りません。レガシー企業にとって、アプリケーションの新しい世界とAPIをレゴブロックのように組み立てて新しいビジネスモデルを立ち上げる時代が来ています。

デジタルの成熟と思考の受け入れ

アランが取った行動は、新しいビジネスモデルを取り入れることでした。一つは「大きな問題を攻撃し」少なくとも「部分的なソリューションがある」ものです(そして他では既にオムニチャネルマーケティングや販売ソリューションを構築していました)。このグループはSaturnF1というスピンオフ企業です。スピンオフの主な理由は、素晴らしいチームとなるために、デジタルの成功の予兆の3番目に備えるものでした。これは、コアビジネスのメンバーへの敬意と可能性を下げるものではありませんが、デジタルビジネスとタイムフレームには異なったスキルが必要であるという認識は受け入れられませんでした。さらに、新しいデジタルビジネスを創造する意欲的なタイプの人々は、いつも通りに事が運べば良いとする文化と古い技術環境の中では、やる気を無くす可能性が非常に高いでしょう。

デジタルへの抵抗感の克服

変化の成功は人々の「ハートとマインド」に向き合うかにかかっています。デジタル事業も例外ではありません。変化の魅力あるケースを生み出す必要があります。変化が個人にどんな影響を及ぼすか説明し、企業が変化の目標に向かうモチベーションを与えます。これは簡単ではなく、最終的な目標は新しいシステムやプロセスほどシンプルではないということがさらにデジタル変革を難しくさせます。デジタル変革とは全く新しい文化や完全に異なるオペレーティングを企業に持ち込むということなのです。

したがって、デジタル変革の成功には伝統的な変化のリーダーシップスキルと戦略が必要で、デジタルの採用を促すオーバーアーチアプローチと繋がっています。表面上は「オーバーアーチアプローチ」はガバナンスに加わった層のように聞こえるかもしれません。しかし、それ以上のものなのです。実際には、デジタルプロジェクトやプログラムはリスクが高く、多くは失敗しています。関係者の不安はそれにより増幅します。そのため企業はデジタル投資の際、いくつかの同時変化イニシアチブとダーウィン風の「最適者生存」のどちらが上手くいくか試し、ポートフォリオアプローチを取り入れたいと考えるかもしれません。

生物学的な進化において「最適者生存」は、遅いながらも非常に効果的な戦略です。ここでの変化とは、抵抗されるのは生き残りに悪影響がある場合のみで、良い変化は歓迎されます。デジタル世界に向けて効率化した進化に適応することで、大自然の教えを受けることができるでしょう。つまり、人々と企業にイノベーションを促すと、恩恵は非常に大きいのです。恩恵は生き残ることかもしれません!

ご連絡先:

ヴィッキー・チャン, カントリー マネージャー
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