近年AI技術の発展により日常生活でも知らないうちにAI技術に触れることが多くなりました。AI技術は生活の身近でも実用化されており、翻訳機能や対話システムにも自然言語処理(NLP)と呼ばれるAI技術が利用されています。今回は日常生活でも利用されている自然言語処理(NLP)の意味や仕組みを解説し、開発事例をご紹介いたします。
自然言語とは?
自然言語とは、人類がコミュニケーションを取るために作り出した言語のことです。具体例としては日本語や英語などが挙げられます。自然言語には、比喩や符やくなどの「曖昧性」が含まれており、この曖昧さは文脈から意味を汲み取る必要があります。
自然言語を解説する上でよく対比されるのが人工言語です。人工言語は自然言語と異なり「曖昧性」が含まれていません。人工言語は特定の意味を持たせ機械などに対して正確に命令をする必要があるため「曖昧性」を排除した作りとなっています。
自然言語処理(NLP)とは?
自然言語処理(NLP)とは、人間の言葉を機械が理解し分析するAI技術のことです。
「曖昧性」を含む自然言語をAIに解析させるには、大量の自然言語データをAIに学習させる必要があり、大量の自然言語のデータから情報を抽出し、言葉の概念を獲得することで言葉が持つ意味を理解できるようになります。
自然言語処理(NLP)の仕組み・処理の流れ
自然言語処理(NLP)の処理の流れとしては大まかに4つの工程を踏んでいます。自然言語処理(NLP)の仕組みや処理の流れについて解説いたします。
形態素解析
まず、初めに行われるのが形態素解析です。
形態素とは、言葉として意味のある最小の言語単位のことを言います。形態素解析では、自然言語の文を形態素に分け、それぞれに動詞や名詞などの品詞に振り分ける作業が行われます。この作業により文の中にある形態素の意味をデータとして扱うことが可能になるのです。
形態素解析に用いられる代表的な形態素解析エンジンとしては、MeCab, ChaSen, IBM Watsonなどが挙げられます。
構文解析
次に行われるのが構文解析です。日本語の自然言語処理(NLP)における構文解析は、形態素解析で分けた品詞同士の関連性を解析します。
構文解析が行われることにより、品詞同士が関係づけられている箇所を探し出し図式として認識します。
意味解析
3つ目に行われるのは意味解析です。構文解析で品詞同士の繋がりを図式として認識しました。しかし、構造としては正しくても単語同士の意味を結びつけられておらず、解釈の仕方が複数存在してしまいます。
意味解析では、そのような複数の解釈の中から統計的な方法などを用いて単語同士の結びつけを見出し正しい解釈を選択します。
文脈解析
最後に行われるのが文脈解析です。文脈解析は、形態素解析や意味解析を行ってきた複数の文に対し、文同士の繋がりを分析することを言います。
文脈解析には、文章中の語の関係性や文章には書かれていない知識など複雑な情報が必要で、このような複雑な情報を学習させることは難しく、未だに実用的な文脈解析システムが登場していません。
自然言語処理(NLP)の課題
自然言語処理(NLP)の課題は文脈解析にあります。現在使われている文脈解析は数字や文字列のように文章を図式とし疑似的な意味理解を行なっているに過ぎません。
自然言語処理(NLP)を人間と同じレベルで文章処理させるには、言葉に含まれた感情なども理解させる必要があります。疑似的な理解ではなく感情などを含めた意味理解を行うには、現在利用している文脈解析の仕組みを根本から変える必要があると言えるでしょう。
自然言語処理(NLP)の活用事例
文書の解析と理解
自然言語処理(NLP)は、人間が文書を読解するよりも早く大量に情報を処理することが可能です。内容の自動抽出、情報の検索、質問応答などに活用することができ、人間よりも早くテキストデータを処理し情報を共有することで、多くのリスク発見などに貢献することが期待されます。
文書の生成
自然言語処理(NLP)は自然言語から情報を処理するだけでなく、テキストを生成するのにも役立てることができます。自然言語処理(NLP)で論文や診断結果などの情報を解析し、要約を生成することで、素人でも簡単に内容を把握することができるようになります。要約に加えて、自然言語処理(NLP)を活用することでAIのみで文章を0から作成することが可能となります。
自然言語処理(NLP)を活用したシステム
自然言語処理(NLP)は、日常生活でもしばしば使われています。では、具体的にどのようなシステムで自然言語処理(NLP)は活用されているのでしょうか。
機械翻訳
機械翻訳には、自然言語処理(NLP)が活用されています。自然言語処理(NLP)の進化により、ここ数年で機械翻訳の精度は格段に上がりました。短くシンプルな文であれば正確な訳を導き出すことができます。しかし、長く複雑な文章になると必ずしも正確な訳を導き出せるとは言えません。これは文章が長くなることにより意味解析や文脈解析が複雑となり正確性に欠けた訳となってしまっているのです。
例)Google翻訳、DEEPL
対話システム
対話システムは、自然言語処理(NLP)と音声認識システムを掛け合わせたシステムです。具体的なサービスとしては、自動応答サービスやスマートスピーカー、音声アシスト、チャットボットなどが挙げられます。
対話システムでは、文脈解析が複雑になっても返答に違和感がないように、頻繁に利用されるキーワードに対し予め返答を設定していることがあります。これは自然言語処理(NLP)の課題の解決にはなっていませんが、機械と対話ができている感覚を演出するのに大いに役立っています。
例)Alexa、Google Home、Siri
かな漢字文字変換予測
文章を入力する際、単語ごとに細かく変換を行う人が多いため、自然言語処理(NLP)が活用されていると実感している人は多くはないと思います。
しかし、かな漢字文字変換予測にも自然言語処理(NLP)は活用されており、細かく変換を行わずに長い文章を入力しても、自然言語処理(NLP)が活用されているため文脈に沿った高精度な変換が行われるようになっています。
例)MicrosoftIME、Google日本語入力
テキストマイニング
テキストマイニングとは、大量の文章から有益な文章を抽出することを言います。
大量の文章を自然言語処理(NLP)の手法により重要な文だけを抽出し、抽出された文章を解析することによって、有益な文章として獲得することができます。
例)SNS分析、アンケート分析
NashTechの自然言語処理(NLP)最新開発事例「スコアリングサービス構築」
学習方法を変革することを目的とした教育テクノロジー企業の事例を紹介します。教育テクノロジー企業ではテキスト解答の採点に掛かる時間と費用に課題を感じていました。
テキスト解答の採点には時間が掛かるのはもちろん、採点を行う教授を雇うのにも時間がかかっており、それに加え1つの解答あたり約3ドルを採点する教授に支払う必要があったため、採点を行うにも莫大なコストを必要としていました。
このような課題に対し、NashTechが開発した自然言語処理(NLP)を用いたAIスコアリングサービスを導入しテキスト解答の採点の自動化を図ったところ、採点を行う教授を雇う費用と雇うのに費やした時間、採点にかかる時間を大幅に削減することに成功しました。
まとめ
自然言語処理(NLP)は、機械翻訳や変換予測サービスなどの身近なサービスで活用されており、ここ数年で自然言語処理(NLP)の精度は大幅に向上しています。しかし、自然言語処理(NLP)には大きな課題を有しているのが現状だと言えます。今後、自然言語処理(NLP)がどのように進化していくのか、注目していきましょう。